イベント参加報告

2017学会・研究会・セミナー参加報告

2017.05.19

JRC2017参加報告

~逐次近似の臨床導入を中心に~


今年のJRCは、最初のセッションの座長から始まり、撮影部会ワークショップの座長、防護フォーラムのコメンテータを務めたり、ITEMに足を運びAquilion Precision(高精細CT)の話を聞いたり、一般演題を聞く暇がないくらい忙しい学会でした。当然?、夜の部も忙しくて楽しくて、色々な意味で充実した学会でした。



学会に参加された方はお気づきになったと思いますが、今年から一般演題の座長が2人になりました。座長を担当した立場からすると、2人で担当すると事前に色々相談できますし、セッションを進行していくのも余裕があったように思います。来年以降も継続して頂けると、座長に余裕が出来るので、学会場での議論も活発になるのではないかと思います(英語の件は別問題ですが・・・)。



撮影部会テーマBでは、「逐次近似再構成の臨床導入」について、「物理評価」、「頭部」、「胸部」、「腹部」それぞれのパネリストの発言の後、討論が行われた。東芝には、逐次近似応用再構成(Hybrid-IR) のAIDER-3Dと逐次近似再構成(Full-IR)のFIRSTがあるが、今回ワークショップでは臨床に広く普及しているHybrid-IRの話が中心となった。多くの方の記憶にあるように、Hybrid-IRが臨床に登場した時は大幅な線量低減が期待され、欧米の論文でも線量低減が可能とした報告が多く行われた。物理評価から考察すると、これは当初の報告に物理評価の間違いがあることが原因であるとの見解が示された。すなわち非線形の画像再構成法であるHybrid-IRに、ワイヤー法を用いたMTF測定やSDによるノイズの評価、CNRによる低コントラスト検出能の評価が用いられたため線量低減可能となる結果が得られたが、Hybrid-IRの画質評価を行うためにはtaskベースの評価を行う必要があるという事である。また、逐次近似応用再構成においてtaskベースと言っても絶対的な評価が出来るわけではなく、相対的な評価を行う事しか出来ないのが現状のようである・・・難しい・・・。物理評価からみた最終的な結論としては、体軸方向を含めた総合的なSNRを算出した場合、FBP法とHybrid-IR法で差がないことが報告された。これは、Hybrid-IRを用いても大幅な線量低減が出来ないことを示していると理解出来た。


「頭部」、「胸部」、「腹部」を担当したパネリストからも、急性期脳梗塞や肝細胞癌などの診断において大幅な線量低減は難しいことが報告され、物理評価とほぼ同じ結果が示された。しかし、元々線量が低くても検査が可能な「肺がんCT検診」などでは、ストリークアーチファクトの低減や、診断の際に邪魔となる高周波のノイズ成分を除去可能なことから画質改善のために用いることは有用であると報告された。


以上を踏まえて、今後のHybrid-IRの臨床導入を考えなければいけないですね。このためには、まずFBP法において基本となる画質を再度検討する必要があり、検査目的に細分化を行う必要もあると思う。皆さんの施設でも、Hybrid-IRの使い方について再度検討をしてみてはいかがでしょうか?もしかすると、描出すべき疾患が描出されていない?なんてことがあるかもしれません。


おまけで、パネリストの先生の名言を紹介しますね。


その1「Hybrid-IRに連動したCT-AECはあまり使わない方が良いのでは?」


その2「線量低減してなければ、Hybrid-IRの強度は施設の好みで良いのでは?」


皆さんは、この名言をどのように受け止めますか?私は、とても意味深い発言であると思っていますよ。



さて冒頭に、「夜も忙しく楽しかった」と書きましたが、木曜日、金曜日、土曜日と美味しいお酒をたくさん頂きました。酒の肴は、やっぱり「CT」ですね。色々な人から興味深い話をたくさん聞かせて頂きました。夜の部は本当に貴重です。お付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました。また、4日間学会に参加させてもらった職場のみんな、ありがとうございました。


・・・なんて気持ちを持ちながら、学会終了後に桜木町に向かって歩いていると、知り合いに声を掛けられました、向かった先は写真の通りです・・・美味しかった。


今年に入ってダイエットを頑張ってきましたが、4日間で数か月分の努力が「無」になりました。でも、学会で得たものが多かったので、「◎」です。

千葉市立海浜病院 放射線科


高木 卓

ページトップへ