イベント参加報告

2018学会・研究会・セミナー参加報告

2018.04.27

JRC2018参加報告 ‐AI技術とキヤノンCT‐

2018年4月12日(木)から15日(日)までパシフィコ横浜にてJRC2018が開催されましたので、その参加報告をさせて頂きます。


日本の診療放射線技師ならすっかりお馴染みとなっているJRC。参加人数は12000人を超えるそうで、ITEMでもおよそ22000人入場することを考えると、日本の医学系の学会の中では、最大規模と言っていいでしょう。おまけに近年は学会の国際化の流れを受けて海外からの演者も多数参加し、「今年は去年よりも人が多いなあ」と毎年身をもって感じている次第です。


そのような流れを受けて、学会で発表・議論される内容も時代の流れを受けて少しずつ変化しているように思います。今年のJRCのテーマが「夢のような創造科学と人にやさしい放射線医学」とあるように、我々が取り扱う放射線技術学の分野にも、最先端の科学技術が取り入れられていることを実感しました。その1つの例が、AI(人工知能)です。車の自動運転やAIスピーカーに代表されるように我々の日常生活にもすっかり広く利用されているAIですが、大量の情報を短時間に処理することが可能ですので、実は画像診断はAIの得意分野ということのようです。

今回の学会に参加して私が驚いたことの1つに、このAIの技術がキヤノンのCTに取り入れられたことです!具体的には、AIのディープラーニング技術(Deep learning reconstruction: DLR)をCTの画像再構成に組み込んだそうで、このDLRにより従来のFBP、AIDR3Dと比べノイズの軽減、空間分解能の向上、アーチファクトの軽減を実現したそうです。なぜDLRによって画質が改善されたのか、機器展示の際にキヤノンの方に説明を受けたのですが、アナログ世代の私の頭では理解できず、チンプンカンプンでした。ですので、これを読んでいるユーザーの方は直接キヤノンの方にお話を聞いてみて下さい。ちなみにこのDLRによる画質改善について発表した演題が、Cyposの銅賞を受賞しました。このことからもこのDLRの技術が素晴らしいものであるということを実感しました。DLRは、現在はキヤノンの超高精細CT(Aquilion Precision)のみに搭載されているようですが、今後は他の機種にも搭載予定ですので、今後の動向に注目したいと思います。

他にもCTに関して多くの研究発表や講演などがなされており、どの会場も早い時間から人が溢れていました。中でも私が特に興味を持ったのが、撮影部会の3DCTAに関するワークショップであり、頭部、心臓、腹部、小児心疾患、そして救急医療で撮影する3DCTAについて各領域でのエキスパートの先生方が、撮影技術の現状や問題点について熱く講演・議論していました。


頭部領域に関しては、3DCTAの臨床的な有用性は言うまではありませんが、安定した画質(造影効果)を得るためには、動脈と静脈の最大CT値をいかにして捉えるかが重要であり、同時に難しいポイントであると話していました。造影タイミングを捉える手法として、固定時間法、ボーラストラッキング法(BT法)、テストインジェクション法、テストボーラストラッキング法(TBT法)がありますが、多くの施設ではBT法が取り入れられていると思います。しかしこのBT法は、あくまでも造影剤の到達のみを捉えている手法であり、造影剤のTEC(Time enhancement curve)の傾きまでは予測できません。特に頭部3DCTAでは、造影剤の注入時間が他の部位と比べ短時間であるために、動脈や静脈の最大CT値を捉えることが難しくなります。この問題点を解決するのが、TBT法であり、山口隆義先生が2009年に考案してから9年が経ちますが、現在はテストボーラスに希釈造影剤を用いたりと、様々に工夫がなされており、なるほどと思った次第です。当院でも頭部3DCTAには、BT法を採用しておりますが、ぜひTBT法を使ってみようと感じました。

ITEMにおける今年のキヤノンの展示ブースは、社名の変更もあって昨年と比べ一回り大きくなっており、例年以上に賑わいを呈していました。私自身も体型や態度を一回り大きくしないよう身を引き締めながら、日常診療や研究に打ち込んでいきたいと思います。


首都圏キヤノンCTユーザー会としても、ホームページや研究会を通じて多くの情報を発信していきたいと思いますので、ユーザーの皆様のご協力をよろしくお願いします。


 


国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 放射線部


川内 覚

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