イベント参加報告

2018学会・研究会・セミナー参加報告

2018.10.19

Global Standard CT Symposium 2018 「Area Detector CTの進化と次世代CTのスタンダード」に参加して

2018年8月18日(土),東京都千代田区JP TOWER Hall & Conferenceをメイン会場に行われたGlobal Standard CT Symposium 2018「Area Detector CTの進化と次世代CTのスタンダード」に参加した。札幌,仙台,大阪,福岡,沖縄に設けられたサテライト会場にも同時中継されており, Area Detector CT(ADCT)であるAquilion ONEシリーズの臨床報告と超高精細CT,Aquilion Precisionの臨床経験や,AIを用いたCT再構成技術Advanced intelligent Clear-IQ Engine (AiCE)の評価なども報告された。


Session1は, 1題目に,村松禎久氏(国立がん研究センター東病院放射線技術部)が,「CT被ばく管理:画像診断管理加算3の背景と波及効果」,2題目は,檜垣徹氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科先進画像診断開発)が「AiCEの物理特性の検証」を報告した。3題目は,大村知己氏(秋田県立脳血管研究センター放射線科)が「ベイジアンアルゴリズムによる頭部血流灌流の評価」を報告した。4題目森谷浩史氏(大原綜合病院放射線科)が,「Area Detector CTによる呼吸動態撮影の臨床応用」を報告した。

この中で特に興味があったのは1題目の村松氏の報告で,2018年度の診療報酬改定で新設された画像診断管理加算3の概要と医療被ばく管理への社会的要請があること,被ばく管理の実際や,個人線量管理の考え方などを説明し,今後は医療法も改正され医療放射線の適正管理が求められるようになることから,被ばく線量を記録,評価,保存するシステム構築が重要であるという内容だった。また、新しい再構成法であるAiCEについても大変興味深く,檜垣氏の「AiCEの物理特性の検証」を報告では、高精細CTではFullIRを用いても,低コントラスト領域の画質を十分に改善できない課題がありAiCEでは,ディープラーニングの結果を再構成技術に適用することで,短時間で高いノイズ低減効果を得ることができる。現時点では,低SNRではAiCEの画質が良好で,高SNRではMBIRの方が高画質であるという内容であった。森谷氏の「Area Detector CTによる呼吸動態撮影の臨床応用」では,肺がん胸壁浸潤診断の検討や呼吸位相の検出など,Aquilion ONEを用いた呼吸動態撮影に関する検討結果を解説し,呼吸動態の定量評価や,肺がんの癒着領域をカラーマップで表示する画像解析機能の開発などにつながっていることを紹介した。

Session2は,1題目に,五明美穂氏(杏林大学医学部放射線医学教室)が,「超高精細CTの特性を活かした中枢神経領域における当院での取り組みと臨床応用」を報告した。2題目は,中村優子氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室)が「DLR『AiCE』の腹部領域における初期経験」を発表した。3題目は,吉満研吾氏(福岡大学医学部放射線医学教室)が「ADCTによる腹部ECV(細胞外容積)解析:肝&膵」と題し,ECVによる肝線維化診断と,正常膵への応用について報告した。最後の4題目に再び森谷氏が,「超高精細CT Aquilion Precisionの胸部における有用性について」を発表した。

五明氏は,空間分解能が大きく向上したAquilion Precisionでは,描出の難しい穿通枝や主幹動脈皮質枝,脳表・深部の静脈の描出が可能になると報告し,わかりやすい症例画像を示した。これらの描出能向上が,脳外科手術の画像支援や,脳梗塞・出血の原因血管の評価にどのように有用性か解説した。2題目は,中村氏が肝臓領域のCT画像は低コントラストにより病変の検出能が低く,線量が十分でない場合はMBIRでノイズを低減しても病変の検出能は向上しない限界があることを解説した。そして,同データでAiCEにて再構成した腹部CTの画質改善の検討を紹介し,腹部造影CTの肝腫瘍検出能を向上させる可能性があることを示した。3演題目の吉満氏は,ECVによる肝線維化診断と,正常膵への応用について報告した。肝線維化診断については,先行研究に触れた上で,Aquilion ONEを用いて行った高精度サブトラクション法によるECVを用いた肝線維化診断の検討について紹介した。肝臓の繊維化は超音波で検査されることが一般的であるが新しい可能性について興味深かった。最後に森谷氏は,Aquilion Precisionの地域一般病院における臨床実用として,使用状況や肺結節・気管支などの臨床画像を紹介した。胸部X線写真にも迫る超高精細な画像が得られることを報告した。また,地域連携においては,超高精細CT・動態CTを用いた特殊外来などで活用しており,肺がんの術前CTの診断にはキヤノンのADCTがなくてはならないものであると報告していた。


今回は、「こんなこと出来るといいね」と思い描いていた未来がすぐそこにきていて、新しい技術と活用が臨床に取り入れられ,劇的に画像が変わっていく風を感じた一日であった。


AiCEもAquilion Precisionも先行導入された施設の方々のたゆまない努力があり技術が臨床応用されていく過程がある。本日の先達者の皆様に感謝と精いっぱいの拍手を送りたい。


 


山梨大学放射線部 相川良人

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