イベント参加報告
2018年ユーザー会参加報告
第2回 東京地区キヤノンCTユーザー会参加報告
2018年11月17日(土)ベルサール御成門駅前にて第2回東京地区キヤノンCTユーザー会が開催されましたので、参加報告をしたいと思います。
爽やかな秋晴れとなった当日は、200人近くの参加者で会場はいっぱいになり、定刻近くになると空席を探す方の姿もみられました。それだけ、キヤノンCTに対して関心、興味を持つ人が私自身を含めて多くいるのだと改めて実感しました。
会はキヤノンメディカルシステムズからの最新情報提供・ワンポイントアドバイスで始まり、平塚市民病院 藤代先生による基礎講演、そして4人の先生方によるユーザー講演を経て、最後は東京大学医科学研究所附属病院の八坂先生による特別講演で閉会となりました。
キヤノンメディカルシステムズの最新情報では、高精細CT Aquilion Precisionと再構成技術AiCEについて紹介されました。Aquilion Precisionは検出器が0.25mmと従来の1/2になり、素子の数は2倍の1792chが配列されているため、高分解能の画像を得ることができます。そのため、下肢の細い血管や病変の浸潤度合いもより鮮明に表現できる部分が非常に魅力的だと感じました。再構成技術AiCEはAIのDeep Learning(深層学習)を用いてノイズの信号を識別するため、空間分解能は維持したままノイズ成分を選択的に取り除く技術です。AiCEによって従来よりもさらに低線量でかつ低コントラスト領域でも粒状性を担保し、ノイズを有効に除去することができるのが、キヤノンCTの武器の1つといえる“被ばくを最小限にする”という理にかなっていると思いました。今後は、Aquilion ONEへの導入を楽しみにしたいと思います。
基礎講演では藤代先生による“キヤノンCTの再構成関数を知ろう!”ということで、さまざまな再構成関数を使用したときのMTFを測定し、検討していました。特に印象に残っているのが、アダムキュービッツ動脈の描出に肺野関数を用いると骨と接した部分の血管を分離することが出来るという報告でした。撮影部位に関わらずどの関数も使用できるという発想はとても新鮮で、症例によって再構成関数を検討することは適切な診断をつける助けになると感じました。
東京ベイ浦安市川医療センターの小島先生は整形領域の骨の3D画像を高周波数強調関数で作成した場合の検討をしていました。軟部条件で作成した3D画像と比較してノイズは目立ちますが、骨折線はしっかりと描出されていました。先生も言っていましたが、手術の時に他職種の人でも分かりやすい画像を出すことができたり、患者さんへの説明の際にも大いに役立つと思いました。
東海大学医学部付属八王子病院の遠藤先生は、冠動脈CTにおいて再構成法でどのような違いがあるのかを検討していました。AIDR3DとFIRSTの比較をしており、狭窄病変では血管内腔のCT値がFIRSTの方が高くなるためコントラストもつき、評価しやすくなるということでした。冠動脈ステント留置後も内腔のCT値が上がることで描出能がAIDR3Dよりもよいとのことでした。FIRSTのデメリットとして再構成に時間がかかるという点が挙げられますが、緊急でCTの後に心臓カテーテル検査にいくような症例にはAIDR3Dを、そうでない場合にはFIRSTと使い分けていて、見極めが重要であると実感しました。
杏林大学医学部付属病院の清水先生は、Aquilion Precisionを用いた頭部3DCTAにおける穿通枝描出について紹介していました。Aquilion Precisionでは1mm以下の細血管を描出するのに非常に有用ですが、データ量が多いため2048マトリックスサイズのままであると3D作成のワークステーションで使用できないのが欠点でした。しかし、トリミングをしてデータ量を減らすことで、画像の質を落とすことなくPrecisionの良い所を最大限に活かしていると思いました。高品質な画像を追求する心意気に感動しました。
国立がん研究センター中央病院の宮前先生は、AiCEの物理特性について検討されていました。AIDR3D、FIRSTと比較してAiCEはどういったときに有用なのかを理解することができました。体格の大きな人を撮影するときにどうしてもノイズが気になってしまいますが、AiCEで再構成した症例画像をみると腫瘍の辺縁が他の再構成法よりもシャープであったのが印象に残りました。また、手の挙上が困難な人の場合の体幹部に対するストリークアーチファクトが、AiCEで再構成すると低コントラスト領域を担保しつつアーチファクトを低減できるメリットなども挙げていました。AiCEを使用して、臨床現場で改善したいと思っていた部分がどのように良くなるのか、私自身も早く実感したいと思いました。
そして最後に、東京大学医科学研究所附属病院の八坂先生による“Deep Learningと放射線画像”の特別講演でした。AIの歴史から構造について丁寧に解説してもらい、Deep Learningと放射線画像診断がどのように結びつくのかを講演してもらいました。肝細胞癌の分類の例では、AIの正答率が思ったよりも高いことに驚きました。その他にも、PET-MR減弱補正やEOBの検査にもAIが利用できるかの試みがされていることを聞き、AI技術がどこまで医療分野に影響をもたらすのか興味を抱きました。
今回、本ユーザー会に参加し、診断に適した高品質な画像や被ばく低減に諸先生方が取り組んでいる姿を見て、私自身も努力しなければならない部分が沢山あると痛感させられました。そして、医療の質を向上させるために奮闘している先生方を拝見して、さらに頑張っていこうと前向きな気持ちにもなりました。キヤノンCTは進化し続けており、その進化に遅れを取らないくらいに私自身も成長しようと思います。
虎の門病院 放射線部 鈴木佳澄