イベント参加報告

2019学会・研究会・セミナー参加報告

2019.02.14

画論26th 参加報告

今年も画論が開催されました。キヤノンメディカルシステムズに変更となって2回目の画論でした。昨年はキヤノン株式会社本社で開催されましたが、今年はまた古巣へ帰り東京国際フォーラムへ!広々とした会場は今年の画論を期待している参加者であっという間に満たされました。


本題の画論26th、CT部門の上位入賞症例は以下の通りです。


1~160列部門・・・「肺血栓塞栓症」、「TACE後のHCCに対するSURE Subtraction Iodine Mappingの有用性」、「精索静脈瘤」、「末梢性肺動脈瘤」、「巨大下顎腫瘍」。


ONE部門・・・「下垂体腫瘍の疑い」 、「短腓骨筋腱縦断裂または筋腱脱臼を疑った立位ストレス低線量CT」、「右上葉肺癌」、「右上肢AVM」、「腰椎椎弓根スクリューのルースニング評価」、「息止め不可患者の腹部volume scanの有用性」。


1~160列心血管部門・・・「TAA(胸部大動脈瘤)[造影剤使用量17mlで大動脈CTA]」ステントグラフト内挿術後vasa vasorumを介したtypeⅡ endoleak


ONE心血管部門・・・「胸部大動脈瘤ステント留置後endoleak」、「主要大動脈肺動脈側副血行路」、「狭心症疑い」、「不全穿通枝同定における4D-CTV」、「心房中隔欠損症」「たこつぼ型心筋症」「腹部アンギオで損傷部同定が困難であったグラフト損傷例の4DCTA」でした。


この中から最優秀賞となった症例は太字で示した症例です。


そして上位入賞された中で我ら首都圏組からの症例は赤字で示した5例でした。そのうち4例は神奈川県勢からであり、キヤノンCTに対する情熱を感じました。 5分間という限られた時間の中で、テクニカルポイントとクリニカルポイントをプレゼンするのですが、ほとんどの施設が関わった医師を招き、一緒にプレゼンしていました。


64列で最優秀だった「精索静脈瘤」は、30mlの造影剤をテストインジェクションし、ダイナミック撮影。限られた撮影範囲の中、ピンポイントに左精索静脈と腎静脈を撮影し、逆流している様子を捉えていました。そのテストを基に本スキャン1相目を40秒後、2相目を70秒後とすることで、左精索静脈のうっ滞も確認することができていました。


「末梢性肺動脈瘤」はPRIMEで撮影。元々AVMを疑う所見であり、精査目的で検査を施行。最終的にAVMなのか瘤なのかを判別するため、TBT法を利用した2相撮影を行い、0.007%という大変稀少な「末梢性肺動脈瘤」を診断することができたそうです。またこの撮影法は施設内のプロトコルとして設定し、誰もが撮影できるようにしているという点を審査員からは高い評価を受けていました。


「短腓骨筋腱縦断裂または筋腱脱臼を疑った立位ストレス低線量CT」も大変面白い内容でした。立位底屈位でのみ痛み症状が強く、腓骨の亜脱臼が起こるということから、寝台の上に患者様を立たせ、立位中間位と底屈位の荷重撮影を行っていました。当然撮影時は寝台がとても高い位置にあるため、リスクも高い撮影になることは容易に想像できます。今回の症例では患者の年齢も30代と若く、撮影時に立位保持が可能か検討した結果このような撮影法をセレクトされたそうです。また立位保持も安定するようガントリーにチルトをかけ、装置に掴まれるよう工夫されたとのことでした。さらに今回は太い筋腱を描出ということもあり低線量撮影を行い被ばく低減にも努めていました。このようにリスクある中でもポジショニング等を工夫することにより安全かつ有益な情報提供が行えることを改めて思いました。


「右上肢AVM」の症例では、CT検査前にUSで多数のAVMと動脈瘤が認められ、治療方針決定のため、4D-CTが依頼されました。上肢のみガントリー内に配置することが可能だったため、座位にてエリアファインダーを用いて1volumeで収まるようポジショニングを行い、USで血流が速いことが判っていたため、造影剤注入速度を5ml/secとし、Dynamic Volume Scanにて動静脈を分離していました。体幹部に撮影範囲が干渉しないことから低線量撮影が可能であり、さらにAPMCを用いることで時間分解能、ノイズともにバランスが保たれていました。今後の治療計画に極めて有用な動体撮影だったとのコメントでした。


「腰椎椎弓根スクリューのルースニング評価」では、通常の再構成やSEMARを用いても椎体のスクリュー辺縁はアーチファクトが多く発生する部分で評価が困難。そこでDual EnergyとVolume撮影を併用することで、管球の回転軌道を合わせ、ミスレジストレーションを軽減、体動も考慮し2.4秒の短撮影時間で検査終了としていました。DEで仮想単色高keV画像を用いることで最もアーチファクトの少ない画像を得ることができたとのことでした。ただし診断医がフォローでCT値を評価している場合はkeVによってCT値が変化するため注意が必要とコメントされていました。

 そして今回なんと言っても、「ステントグラフト内挿術後vasa vasorumを介したtypeⅡ endoleak」がとても興味深い症例でした。この症例は当会世話人でもある平塚市民病院の藤代さんが応募された症例でした。EVAR術後のフォローアップCTにて遅延相で瘤内の造影効果が認められたが責任血管が同定困難な症例であり、徐々に瘤径が拡大傾向となったためIVR-CT室にて責任血管同定を目的としたCT Arteriographyを施行された症例でした。IVRだけでは描出困難であったが、高いコントラスト分解能を持つCTを併用することにより動脈壁とsacの濃染を確認可能とし、endoleakの責任血管を把握できたとのことでした。このvasa vasorumという血管は大動脈壁の外側1/3を栄養する血管で、アダムキュービッツや脊椎への血管へ繋がっている場合もあるので、塞栓術を行う際は確認をしたい血管である。今回このように珍しい経路からのendoleakをCTで判明することができ、治療方針の決定に大きく貢献したところを審査員は高く評価され、最優秀賞を受賞されました。本当におめでとうございます。最優秀賞が発表されたときは自分のことのようにドキドキし、感動しました。


まだまだその他の症例に関してもたくさんの工夫がされていて、とても勉強になりました。私はあいにく今まで上位入賞にかすりもしませんでしたが、今回の画論を聴講していて感じたことは、発表者全員が短時間でのプレゼンが本当にうますぎたこと。そしてなにより、どれも先入観という概念はなく、依頼医師が欲しいと思っている情報をいかに描出するかをとことん考え、ポジショニングに工夫する点はないのか、自施設のCTのスペックで出来ることは何か、その他症例に対する情報はないかなど、患者様に対し、そして自身が使用するCTに対して向き合うことで、このような素晴らしい画像提供を行っていました。


また、日頃から医師とのコミュニケーションも密にとっている様子がプレゼンを聞いていて想像できました。医師とのカンファレンスに重ね、医師が日頃何を求めているのか、そしてCT撮影を行う技師に対する要望などを日頃からお互い確認している姿を思い浮かべました。ちょっとしたコミュニケーションから一人の患者様を救うことに繋がることは多々あるのではないでしょうか。入賞された施設はどれもそういった背景があるように感じました。


画論へ出してみようという気持ちももちろん大事ですが、目の前の症例と向き合い、その症例に対しベストを尽くす結果が画論に結びつく。画論へ出される症例は決して珍しい症例だけではなく、日頃の業務の中でより良いCT検査を実施することを考え抜いた結果だと思います。その過程、その意欲、その精神が我々の業務には大切だと痛感した、今回の画論でした。


最後に、今回私の参加報告を読まれた皆様、日頃の業務の中で巡り合う症例に全力を注ぎ、それを画論という舞台でプレゼンしてみてはどうでしょうか。 私も身を引き締め、日頃の業務に励みたいと思った次第であります。 今後ともキヤノンCTの能力を最大限に引き出し、より安全で質の高い医療に貢献していきましょう!



おまけ


最優秀賞を見事GETしました、当会世話人藤代さんにコメントを頂きましたので合わせて報告したいと思います。 まず受賞した際、舞台の上でこう喜びを表現されていました。


「本日はありがとございます。全然関係のない話ですが、先日うちの娘が作文で表彰されました。その時ももちろんものすごく嬉しかったのですが、今日の方が数倍嬉しいです!」 と。


さらに表彰後のコメントを伺ったところ、


「受賞のポイントは、学会発表と違い奇跡の一枚でも戦えるので軽い気持ちで応募する事!と医師とのコミュニケーション!」


だそうです。まさにそうだと思います。


以上、おまけでした。


亀田総合病院 小野雄一朗

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