イベント参加報告

2019学会・研究会・セミナー参加報告

2019.02.19

Advanced Imaging Seminar 2019参加報告

雪の舞う2月9日、東京駅徒歩1分という好立地のJPタワーホール&カンファレンスにて、Advanced Imaging Seminar 2019が「臨床に磨かれ、臨床の未来を輝かせる医療画像を」をテーマに開催された。Session 1はMR、Session 2はCTについて2部構成の講演が行われた。雪の影響?で、少し遅れての参加となりましたがセミナーで印象深かったことを報告致します。


Session 2-1ではCTの技術・臨床アプリの講演が4名の先生から行われた。



杏林大学医学部放射線医学教室の町田治彦先生は、「Dual-energy CT の臨床的ポテンシャル」についてご講演されました。


Dual Energy撮影の低KeV画像は、低管電圧撮影と同等のコントラスを得ることが可能で肝細胞がんの検出能の向上に有用であることが示されるとともに、低KeV画像による造影剤の減量の可能性についても解説されました。また、Dual Energy 撮影により得られるKeV-HU曲線は単純撮影において有用性が高く、脂肪を含む副腎腫瘍と脂肪を含まない腎細胞がんの副腎転移などの鑑別が可能であることが示された。さらに、ヨード/水密度画像や水/脂肪密度画像などを用いた肺塞栓、胆石、びまん性脂肪肝の診断など、Dual Energy CTの有用性について多くの症例を提示して頂きご紹介頂きました。



富山労災病院中央放射線部の野水敏行先生は、「Dual energyによる新しいコントラスト表示BBI : Bone Bruise Image」についてご講演されました。野水先生は、皆様にご紹介するまでもない方かとは思いますが、CTの整形外科領域では常にトップランナーとして走り続けている先生です。


これまで整形領域のDual Energy CTは高KeV画像が有効となる、メタルアーチファクトリダクションや腱の描出に使用されて来ましたが、野水先生は骨折の診断が非常に困難な不顕性骨折の描出にDual Energy CTを応用することを考えられました。これが「BBI : Bone Bruise Image」です。BBIは簡単に言うとバーチャルカルシウム除去画像とのことでした。BBIを得るためにヨードマップを応用し、カルシウム除去のための検討を行い、傾きを0.67~0.71とすることでバーチャルカルシウム除去画像を得ることが出来るそうです。また、ノイズの影響も大きいためスライス厚は3~5㎜で評価を行っているとのことでした。不顕性骨折の診断はMRIがスタンダードとなっていますが、現状MRIを受傷直後に撮影可能な施設は非常に限られており、診断の遅れから治療開始の遅れが生じることになります。患者さんのため、そして時間及び経済的なロスを少なくするために非常に有用な方法ではないかと思います。野水先生は、更に定量評価についても検討をされるとお話しされていましたので、もしかすると骨折の自動判定なども始まるかも知れません。トップランナーは、いつまでも走り続ける!!流石だと思いました。



静岡県立静岡がんセンター画像診断科の瓜倉厚志先生は、「造影CT画像の特性を活かし正確な画像診断へ 」についてご講演されました。講演を聞くまでは、「造影CT画像の特性を活かし正確な画像診断へ 」とはとても壮大なお話だなあと思っていたのですが、講演を聞いてみると「非剛体レジストレーションとサブトラクションを用いた造影CTの正確な画像診断」といった内容でした。


皆様もご存知かと思いますが、最新?のキヤノンCTに搭載されているSURE Subtractionは非常に精度が高いと言われています。瓜倉先生のご講演では、まずSURE Subtractionを用いることで肝細胞がんの正確なヨード造影剤分布が得られることを示されました。また、通常のCT画像では画像ノイズがヨードの定量性に大きな影響を与えるが、サブトラクションを行うことで画像ノイズの影響が少なくなりヨードの定量性が向上することを検証データも交えて解説して頂きました。また、ヨードの定量評価としてDual Energy CTのヨードマップも有用性が高いが、TACE併用のRFA治療後のフォローアップ検査においては、Dual Energy CTのヨードマップではリピオドールの影響を排除することは不可能であるが、SURE Subtractionでは単純画像をサブトラしているため、リピオドールの影響を排除可能であり臨床における有用性が高いことが示されました。さらに、MRIの有用性が高い頭頚部の腫瘍においても、SURE Subtractionを用いることで腫瘍の造影効果をより正確に評価する事が可能で、特に撮影時間が長く動きに弱いMRIと比べた場合、SURE Subtractionを用いた造影CT検査はモーションアーチファクトの影響が少ないため、腫瘍の進展範囲を正確に診断可能であり有用性が高く、加えて造影効果の少ない腫瘍に対してはCE Boostを併用することで診断能が向上した症例についても提示して頂きました。まだ続きがあるのかと言えば、実はありまして、義歯からのアーチファクト対策としてSEMARを併用した症例も提示して頂きました。一言でいえば、SURE Subtractionはすごい技術であると思いました。特に非剛体の位置合わせ精度が非常に向上していることにビックリでした。



医療法人春林会華岡青洲記念心臓血管クリニックの山口隆義先生は、「循環器領域における新しい画像診断技術」についてご講演されました。山口先生は、皆さまご存知の通り、心臓CTの第一人者です。野水先生を整形外科領域の「トップランナー」と前述させて頂きましたが、山口先生のご紹介の際に座長の横浜市立大学の宇都宮大輔先生が「心臓CTの辞書」と称されていました。「辞書」とは山口先生にぴったりの形容詞だと感じました。


これまで冠動脈CTのリミテーションとしては、高度石灰化症例や冠動脈ステント挿入症例が挙げられていますが、山口先生はこれらの課題にSURE Subtraction Coronaryを利用して診断能の向上に取り組まれています。精度向上のため、山口先生が考案されたtest bolus tacking法(TBT法)を併用した息止め時間13sでのサブトラクションボリュームスキャン、心拍数コントロールによるフルスキャン再構成などに取り組まれていることは皆様もご存知のことかと思います。冠動脈ステント内の描出能向上に関しては、Dual Energy CTの有用性も報告されていますが(キヤノンCTでは冠動脈撮影には未対応)、山口先生が検証された静止状態のファントムを用いた検討では、ステントの材質により内腔の評価が困難なものがあることが示されました。これに対してSURE Subtraction Coronaryではステント材質による影響が少なく有用性が高いとお話しされていました。また、近年注目されている心筋のViability imagingに対する取り組みについてもお話しされました。Viability imagingとしては、核医学検査とMRI検査によるLate gadolinium enhancement (LGE)が主に用いられているが、CTにおいても遅延造影(delayed enhancement)による心筋Viability imagingの取り組みが行われている。しかし、MRIと比べてコントラストが十分得られないことが弱みである。山口先生の施設では遅延相から冠動脈相を非剛体サブトラクションすることでコントラストを改善するSMILIE(subtraction myocardial image for LIE)を考案され、MRIに匹敵する精度の高い心筋Viability imagingが得ているとお話しされました。



Advanced Imaging Seminar 2019では、キヤノンCTの最新情報を多く拝聴することが出来てとても有意義でした。「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに叱られるくらい最新情報を見落としていた自分を反省すると同時に、最新の装置やアプリケーションを臨床に役立てたいと思う自分がいることにも気付かされました。(装置の更新がないとなかなか実現は出来そうもないですが・・・・) とにかく、色々な意味で有意義なセミナーでした。

 


お詫び:Session 2-2診断から治療まで「画像を最大限に活かした治療」についてもご報告したかったのですが、所用のためご講演を拝聴することが出来ませんでした。申し訳ありません。


 千葉市立海浜病院 放射線科 高木 卓

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