イベント参加報告

2019ユーザー会参加報告

2019.04.25

第2回 神奈川地区キヤノンCTユーザー会 参加報告

2019年3月16日に横浜みなとみらい21地区に立地するナビオス横浜にて第2回神奈川地区キヤノンCTユーザー会が開催されました。時に小雨も降る肌寒い土曜日の午後にも関わらず65名の参加がありました。不慣れではありますが、会場で学び感じた私なりの参加報告をさせて頂きます。

会はキヤノンメディカルシステムズ(株)の廣瀬様によるRSNA報告と最新情報提供から始まり、総合司会を務めた聖マリアンナ医科大学病院の小川泰良先生と平塚市民病院の藤代渉先生による首都圏ユーザー会のコンテンツ紹介、画論に応募した内容を医療法人誠医会宮川病院の竹崎徹先生ならびに横須賀市立市民病院の能重達匠先生ならびに聖マリアンナ医科大学病院の倉持賢司先生に発表して頂き、神奈川県立循環器呼吸器病センターの太田陽一郎先生によるAquilion Precisionに関して基調講演をして頂き、最後に栃木県立がんセンターの萩原芳広先生にX線CT検査における管電圧変化の影響について特別講演を賜り閉会となりました。

キヤノンメディカルシステムズ(株)の廣瀬様の最新情報提供ではAquilion Precisionの紹介があり、面内および体軸分解能0.15mmの画像を供覧しました。ステント留置後の冠動脈CT画像ではステント内腔の狭窄が従来よりも明瞭に描出されており超高精細CTの真価を感じました。さらにAquilion Precisionでは小焦点2種類、大焦点4種類が用意されており、体型や撮影部位等に依って従来よりも最適な焦点を選択できるようになっていました。深層学習を利用した新しい再構成方法であるAiCEの紹介では、キヤノン工場ベースで再構成された高品質なFIRST画像を教師画像として用いてModel learningによりノイズ低減を行うとのことで、低コントラスト領域の画質改善が見込め、FIRSTよりも早い画像提供が可能である点に魅力を感じました。最後にトピックスとしてSpectral CTという Multi Energyの新たなアプローチについてお話があり、今後を期待させる内容となっていました。 


聖マリアンナ医科大学病院の小川先生からは「ADCT/MSCTデスクが何をしているか」について話を頂きました。デスク担当はユーザーの要望・改善事項を募り、選りすぐった項目をメーカー側との会議で伝えてくれているという実態を知ることができました。デスクを担当してくれている先生方はご多忙な中でユーザーのために時間を割いてくれており、感謝する気持ちを持つとともに協力していこうという意識が持てました。


平塚市民病院の藤代先生は腹部・縦郭・肺野・骨・頭部といったよく使われる関数の特性を紹介してくれました。骨関数FC31等の過度な強調関数は骨周辺でアンダーシュートが発生している場合があるので注意が必要とのことでした。特に興味深かったのは、FC43で再構成することでCT値が若干上昇するという点で、これをAdamkiewicz動脈の描出に用いてCPRを作成していました。決められた部位に捉われずにキヤノンCTの豊富な再構成関数を生かすことでより質の高い画像が提供できるのだと気づかされる内容でした。


画論in神奈川と題された画論報告会は医療法人誠医会宮川病院の竹崎先生による「内腸骨動静脈瘻」のご発表から始まりました。腹部疾患のフォローで撮影された単純CTにて左内腸骨動静脈瘻が疑われた症例で、600mgI/kgを30秒注入の3相(30/90/180秒)で造影CTを施行しており、1相目で左内腸骨動脈から直接静脈に流入していることが分かる画像となっていました。血管内部に大きな血栓がある可能性があり最適なタイミングで動脈相が撮影できないと懸念したこと、十分な時間をおかなければ静脈部の流出が捉えられないこと、並びに今後のフォローを考慮して時間固定法を選択したとのことでした。


続いて横須賀市立市民病院の能重先生による「頸部腫大リンパ節に対する義歯Artifact低減撮影」についてご発表がありました。金属アーチファクト低減処理であるSEMARを用いて、病変の輪郭および広がりを正確に把握するために義歯のArtifactを極力を少なくなるように工夫(ポジショニング+高管電圧+Tilt撮影)したとのことでした。事前研究で得られた同一平面上に金属が存在しないようにポジショニングすることでSEMARの補正効果が向上したことを臨床で活かしており、放射線治療計画に支障のない画像を提供できていました。


最後に聖マリアンナ医科大学病院の倉持先生から「上大静脈内腫瘍」についてご発表がありました。右肺がんの手術歴があり上大静脈内に造影剤の鬱滞や逆流の可能性があり、腫瘍の造影効果が低下することを考慮したとのことで、造影ルートを右下肢末梢静脈に確保し、台形クロス注入法を用いて1相で撮影された症例でした。下肢からの造影により上大静脈のCT値が過度に上昇するのを抑え、クロス時間を10秒とした台形クロス注入法によりPA(CT値440HU)とPV(CT値330HU)のCT値差を90HUとしたことでVR作成時間も短縮できたとのことでした。1相撮影によりミスレジストレーションのない画像かつ被ばくも低減できる完成度の高い手法であり、今後の参考になりました。


画論in神奈川では参加者による投票が行われ、倉持先生のご発表が第1位に選出されました。 


基調講演では神奈川県立循環器呼吸器病センターの太田先生に「Aquilion Precisionの基礎検証」について講演頂きました。ご所属先がAquilion Precision(以降Precisionと略)とAquilion ONE GENESIS Edition(以降GENESISと略)をお持ちのため2機種のMTF・NPS・SNRを比較した結果を示してくれました。全ては書ききれないので内容を簡潔にまとめますと、腹部関数FC03を用いたMTF wireの結果では50%MTFおよび10% MTFはPrecision HRモードの方が高い値を示していました。NPSの比較ではPrecision HRモードがGENESISよりも高い値を示すグラフとなり、SNRの比較ではPrecision HRモードがどの空間周波数においても高い値を示すグラフとなっていました。


AiCE(Body)を用いた場合の物理評価では、AiCE(Body)のMTF taskはFIRST(Body)よりも低中空間周波数では常に高い値を示し、線量とCT値が高くなるほど向上するグラフが提示されました。NPS比較では管電流を変更してもFIRST(Body)はFBPとほぼ同じ形状を保ちつつノイズ改善を示すグラフを示したのに対し、AiCE(Body)は空間周波数ごとにFBPとは異なるグラフとなりAIDR3Dに近い非線形処理であることを示していました。SNR比較ではコントラスト差が大きい場合(330HU差)にはAiCE(Body)はFIRST(Body)に及ばないもののAIDR3D(Mild)より高い値を示し、コントラスト差が小さい場合(120HU差)にはAiCE(Body)は低周波数でFIRST(Body)を超える値を示すグラフとなっていました。


症例紹介で使用された画像はPrecision のUHRモード+AiCEを用いており、細葉構造から分布まで明瞭に観察できる圧巻の画像となっていました。困難とされてきた特発性肺繊維症IPFと慢性過敏性肺炎CHPの鑑別にも貢献できるとのことでした。なお超高精細CTの運用で課題となる画像マトリクスサイズはDFOVから算出したナイキスト周波数を考慮して1024×1024を採用し、2048×2048は必要時のみ送信する運用をされているとのことでした。内容が盛りだくさんで初めて学ぶこともあり私は質問することさえできませんでしたが、Precisionの超高精細とAiCEによる画質向上によって今後の診断が向上するのではと可能性を感じた45分間となりました。


栃木県立がんセンターの萩原先生からは「管電圧変化がX線CTに及ぼす影響について」という題名で実験データと論文を絡めつつ講演頂きました。例えば、同一条件で管電圧を120kVから100kVに変更した場合では、ヨード系造影剤のCT値は1.2倍に上昇し、使用する造影剤量を2割程度減量できますが、一方でX線出力が低下し画像ノイズは増加してしまいます。そのため成人で造影CTを撮影する際に管電圧100kVを選択すると120kVの画像と同等のノイズにするためには管電流を高くする必要があり、患者の被ばくはむしろ増加(特に腹levelで表面線量が増加)するとのことでした。低管電圧で造影CT検査をすることで被ばくを低減できたという論文は、CNRが同程度となるようにした場合という条件がついているので解釈に注意が必要とのことでした。一方、小児の場合は成人よりも径が小さいため画像ノイズがさほど変化しないとのことで、体重による管電圧選択(体重10kg未満の場合は80kV、10kg以上20kg未満の場合は100kVを選択するという例を紹介して頂いた)することで造影剤量を減じつつコントラストを上昇させた画像が提供可能であるとのことでした。


スライドの合間に栃木県の話題(改札機生産国内1位など)を挟んで県をアピールすることを忘れない萩原先生のユーザーに向けた分かりやすいご講演のお陰でX線CTにおける管電圧変化の影響について体系的に理解することができ有益な時間を過ごすことができました。


ユーザー会に参加して、今回学んだことを日々の臨床に活かし最良のCT画像を提供できるよう取り組んでいこうと改めて意識することができました。


講演して頂いた先生方、キヤノンCTユーザー会を運営・開催してくれている世話人の皆様、後援して頂いているキヤノンメディカルシステムズ(株)の皆様に感謝します。次回の神奈川地区キヤノンCTユーザー会も楽しみにしています。


長文となってしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。


 


平塚市民病院


鴨志田正幸

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