イベント参加報告

2019ユーザー会参加報告

2019.12.17

第3回東京地区キヤノンCTユーザー会 参加報告

2019年11月16日にキヤノンメディカルシステムズ株式会社 首都圏支社にて第3回東京地区キヤノンCTユーザー会が開催されました。「線量管理と撮影プロトコールの再考」というテーマのもと、主に2020年4月に改訂される医療法施行規則の一部改正に関連したCT検査における線量管理と患者被ばくについての内容でありました。今回、キヤノンCTユーザー会に参加しましたので、参加報告をさせていただきます。


当日は冬が近づいていることを思わせる肌寒い日であるにもかかわらず、定員の100名を超える人数の参加があり、会場は開始前から多くの参加者で賑わっていました。


会はキヤノンメディカルシステムズによる線量管理ソフトの紹介と最新のカメラとAIを利用した新しい医療についての最新情報提供に始まり、聖マリアンナ医科大学病院の小川秦良先生の基礎講演、三井記念病院の細田直樹先生、東京都立多摩総合医療センターの浅野智生先生、東邦大学医療センター大森病院の鷲塚冬記先生によるユーザー講演、最後に国立がん研究センター東病院の村松禎久先生による特別講演を経て、閉会となりました。


キヤノンメディカルシステムズの最新情報提供では、2020年4月に改訂される医療法の施行規則についての説明と線量管理ワークステーションのDoseXrossの紹介、最新のカメラとAIを用いた新しい医療について今後の展望を紹介していただきました。


DoseXrossは個人の被ばく線量のみならず、同じプロトコールにおける装置間の線量情報や装置更新における旧装置と新装置間の線量情報の比較ができ、様々なデータから線量管理ができるようになっていました。また、最新の高感度カメラを用いた医療への応用についてはセキュリティのみならず、AIを用いた患者待ち時間の予測表示やプライバシーに配慮した個室病室の監視、転倒をアラートしてくれる技術や顔認証を応用した患者の無断外出を警告してくれるシステムなど、これまでにない新しい試みがあり、今後の利用拡大を期待させる内容となっておりました。



基礎講演の聖マリアンナ医科大学病院の小川先生からは「CT装置の線量情報を正しく利用する~線量管理や診断参考レベルへつなげよう~」というタイトルでCT装置に表示されているCTDIvolとDLPがどのような値を表示しているのか、体幹部用と頭部用のどちらのファントムを用いて算出した値なのかCTDIvolからDLPを算出する方法やその時に注意すべきヘリカルスキャンのオーバーレンジング、診断参考レベルとの比較についての内容でした。



ユーザー講演は、三井記念病院の細田先生による「冠動脈CTにおける被ばく低減~新旧Aquilion ONEの比較~」についての発表から始まりました。


三井記念病院に導入された初期のAquilion ONEと今回新しく導入されたAquilion ONE NATURE Editionの比較に始まり、新機種の冠動脈CTにおける被ばく線量を低減するためには、どのようにしたらいいかと考えた結果、管電圧を120kVから100kVに変更し、画像再構成にFIRSTを採用していました。


管電圧と画像再構成の変化に伴う画質の変化を詳細に検討しており、特に管電圧120kVのAIDR 3D Enhancedを使った画像と100kVのFIRSTではCNRに違いが見られなかったこと、将来的には造影剤量を減量できるのではないかと言っていたことが印象に残りました。



続いて東京都立多摩総合医療センターの浅野先生による「Aquilion ONE導入における被ばく線量低減効果と線量管理システムの初期経験」についての発表がありました。


画像再構成のFIRSTによって従来のAquilion64 よりも少ない線量で同等の画質を得ることができたとのことでした。また、新しく導入された線量管理システムについての発表もありました。線量管理システムは、まだまだ導入されている施設は少ないですが、導入に伴って苦労した点などを聞くことができたのは、今後の参考になりました。



東邦大学医療センター大森病院の鷲塚先生から「Precision ~高精細だけど被ばくって…?~」というタイトルで、東邦大学医療センター大森病院で運用しているAquilion Precisionと他のCTについて、被ばくや画質など比較した内容の発表でした。


Aquilion Precisionは検出器0.25mに由来した高精細な画像の作成が可能であり、頭部CTA撮影では空間分解能が高く、末梢血管までしっかりと描出できる反面、被ばく線量が多くなる傾向にあるとのことでした。また、聴器などの撮影範囲の短い撮影においてはヘリカルスキャンによるオーバーレンジングの影響を受けてCTDIvolは少なくなる反面、DLPは多くなるとのことでした。ノイズを軽減させるFIRSTを使ったとしても空間分解能と被ばく線量は切り離せない関係にあるものと感じました。



最後に国立がん研究センター東病院の村松禎久先生による特別講演は、「診療放射線の安全管理-CTの線量管理から見えてきたこと-」というタイトルでした。過去の米国での、CT-Perfusion撮影における過剰被ばく例を交えつつ、日本で今回の医療法の改訂に伴って線量管理の項目が増えた理由と、その背景や歴史、そして得られる成果から次の解析へデータがつながる重要性、国際的な枠組みについてなど貴重な話を聞くことができました。いずれも日本の医療被ばくの現状ややCTにおける被ばく線量管理の重要性についてについて考えさせられる内容であり、とても有意義な時間を過ごすことができました。



今回ユーザー会に参加し、他施設での線量管理や被ばく低減への取り組みを聞いて、今まで自分はCTの被ばくについてあまり大きく考えていなかったと反省しました。これからは画質や撮影手技のみならず被ばく線量についても考えた最良のCT検査ができるよう日々奮闘努力して参りたいと思います。

 


虎の門病院 放射線部 村橋啓太

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