イベント参加報告

2020学会・研究会・セミナー参加報告

2020.12.28

第19回CTテクノロジーフォーラム参加報告

2020年12月19日(土)に第19回CTテクノロジーフォーラム(CTTF)が開催されましたので、参加報告をさせて頂きます。


テーマに「CT検査の線量管理と最適化を考える 臨床に活きる部位毎の撮影条件の見直しとスキルアップ」を掲げ、当ユーザー会の世話人である木暮陽介副代表が当番世話人を務めました。毎年、このCTTFは、12月に開催されるので、1年の締め括りの研究会という意味合いが強く、私自身も、このCTTFを迎えるとクリスマス・年末を実感する、思い入れのあるイベントの1つです。例年は、会場に足を運び、発表やディスカッションの熱気を肌で感じながら、新しい知識を吸収するのですが、今年は新型コロナウィルスの影響でweb開催となり、残念ながら自宅のパソコンの前で聴講していました。


プログラムは、教育講演、オムニバスセッション、特別講演という3部構成となっており、それぞれの領域のエキスパートの先生が、施設のCT検査に関わる取り組みを紹介していました。「線量管理」という言葉は、CTに限らず臨床の現場で最もホットなキーワードの1つであり、私自身もとても興味深く拝聴させて頂きました。本来ならば全ての演者の講演内容を紹介したいところですが、誌面の都合上、特に私が印象に残った発表内容について、紹介したいと思います。



オムニバスセッションでは、「線量管理から見えてくる臨床活用」というテーマのもと、頭部、腹部、心臓、そして小児領域の線量管理に纏わる、被ばく線量の低減、プロトコール構築について講演がありました。この中で腹部領域を担当した岐阜大学医学部附属病院の三好利治先生の講演がとても印象に残りました。「線量管理部門との連携における腹部CT検査の最適化」というタイトルが示す通り、この施設では、放射線部の中に被ばく線量管理部門が設けられており、担当者が線量管理システム(Dose Watch)の管理やCT検査における被ばく線量の検証を行っていました。CT装置を複数台所有している施設ですので、ある装置の肝臓ダイナミック検査被ばく線量が高いということが明らかになれば、CT部門の担当者に連絡してその原因を検討し、必要であれば放射線科の医師と協議してプロトコールの変更を行っていくという、一連の取り組みをとても分かりやすく紹介していました。


私が感銘を受けたのが、放射線部の中に独立した被ばく線量管理部門が設置されていることでした。医療情報や院内ネットワーク、各モダリティの検査内容に精通している診療放射線技師が担当することにより、システムの構築や撮影プロトコールの管理、装置管理などが、とても機能的に行われていました。当院では、放射線部の中に画像管理部門は存在するものの、被ばく線量の管理は主に各モダリティの担当者が行っているため、今後線量管理システムが導入された際には、参考にしたい実例の1つでした。被ばく線量管理部門に専用のスタッフを配置することはハードルが高く課題があるかと思いますが、各個人の業務量軽減や線量管理の質を高めるためには、とても有効な手段であると感じました。



特別講演では、順天堂大学放射線診断学講座 富澤信夫先生が「低被ばく化したCT技術をどう使う? ~Physiologicalな循環器CTを目指して~ 」というタイトルで、現在のCT装置を用いて、どのように心臓CT検査を行っているかということを、とても幅広い視点から講演されました。


順天堂大学では、包括的CT検査として、適応症例の選択をしつつ、冠動脈、心機能、心筋の評価を行っており、正しく最先端の心臓CT検査であると実感しました。富澤先生の言葉の中で印象に残ったのが、我々診療放射線技師に何を求めるかという質疑の中で、「疾患の病態の解釈が時代とともに変化しているので、それに合わせた画像診断を行うことができるように撮影技術を構築して欲しい」ということでした。心臓CTでは、当初は冠動脈の狭窄のみが診断できればいい、いわば高コントラスト領域を対象にした検査でしたが、その後プラーク診断が重要となり、現在では、心臓CTでも遅延造影を行うケースも増えてきているので、より低コントラスト領域の描出に画像診断が進んできています。そのため、被ばく線量を最適化した上で、撮影プロトコールを構築することが重要となり、我々技師には、より高いレベルの撮影技術が求められているのだと実感しました。私は、入職して20年近くなり、心臓CTの進歩を目の当たりにしてきた世代なのですが、富澤先生の発言が正しくその通りであり、医師と同じように疾患や病態に関する知識を持つことが、これからの診療放射線技師に求められているのだと、身が引き締まる思いとなりました。



今回のCTTFを教育講演、オムニバスセッション、そして特別講演と全体を通じて聴講すると、現在の線量管理時代に至る背景、現場での取り組み、そして医師の立場からのCT検査の位置付けなど、一連のストーリーが整理されて頭の中に入り、最後にはとてもスッキリとした気持ちになりました。各演者に対して、webを通した質問も多く寄せられていたので、このように感じられたのは、私だけではなかったのかと思います。例年のような大きな会場であると、なかなか質問はしづらいかと思いますが、web開催であると気軽に質問ができるのは、良い点なのではないかと感じました。


次回のCTTFは第20回となり、節目の記念大会となります。CTTFの世話人の先生の来年に対する熱い意気込みも感じられましたので、ぜひ来年は現地での開催を望みたいと思います。



国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 放射線部

川内 覚

ページトップへ