イベント参加報告

2021学会・研究会・セミナー参加報告

2021.11.10

第49回 日本放射線技術学会秋季学術大会 参加報告 ‐Withコロナ時代における学会発表の在り方‐

2021年10月15日(木)から17日(日)まで熊本城ホールにて第49回 日本放射線技術学会秋季学術大会が開催されましたので、その参加報告をさせていただきます。


昨年度の秋季学会は、東京での開催が予定されていましたが、新型コロナウィルス感染症の影響により中止になり、2年振りの開催となりました。私自身も、この1年間自粛生活を送っていたため、東京から西側への移動も1年間行っておらず、最初はドキドキしながら空港に向かいました。いざ、飛行機に乗ったものの、目的地の熊本空港が他社の飛行機が立往生しているとのことで滑走路が封鎖。1時間近く熊本上空を旋回していましたが、結局は着陸を断念し、福岡空港に降ろされてしまいました。早速、波乱に見舞われてしまった訳でありますが、このようなトラブルも現地参加ならでは体験であり、オンライン参加では味わえないことであると思います。


私が秋季学会に参加した大きな目的は、CTに関する一般演題にエントリーしたことにあります。今年の秋季学会は、現地参加とオンライン参加のハイブリッド開催であり、発表演題に関するスライドは、事前収録という形で提出を済ませていました。質疑応答、ディスカッションについては当日行うこととなっており、演者・座長共に会場に出向かなくてもオンラインで対応可能という形式でした。従って、私もわざわざ熊本まで行かなくても演者としての役割は果たせたのですが、やはり自分の発表に対する聴衆の反応を直接実感したいと思い、現地での参加を決めました。そこで、私の参加報告は、今回の学会参加を通じて演者として感じたことを中心に述べさせていただきたいと思います。

私が発表した演題のタイトルは、「頭部 CT 撮影における X 線管の撮影開始角度が水晶体線量へ及ぼす影響」でした。要旨としては頭部CT撮影において、X線管の撮影開始の角度の変化が水晶体線量に影響を与えていると考え、逆にキヤノン社製のCT(Aquilion ONE)において軌道同期スキャンと撮影間の休止時間を併用して撮影開始時のX線管の角度をコントロールして、水晶体被ばく線量の低減に取り組んだ研究でした。この研究に関しては、私は発表に際しては不安が強く質疑においては色々な批判的なコメントがあるのではないかと、内心ヒヤヒヤとしていました。しかし、実際は座長や会場の聴衆の方からは、好意的なコメントを直接もらうことができて安心した次第です。実際に自分の発表動画が流れている時や質疑応答の時の聴衆の反応・表情、空気感というものは、オンラインでは感じることのできないことであり、現地参加の大きなメリットであると思います。特に会場の前列に座っている、いわゆる“CT分野の重鎮”の方が自分の発表を真剣に聞いていてくれたり、他の聴衆がメモを取りながら聞いてくれたりしていることは、自分自身の研究に対するモチベーションの向上に繋がることと思います。またセッションが終わった後も会場の外でディスカッションをしたり、色々な意見をいただいたりすることもできます。実際に私自身もこの“場外議論”で新たな気付きを得ることができ、今後の検討課題を見つけることができました。もちろん、個人や職場の事情からオンラインでの学会参加がやむを得ないこともあるでしょうし、オンライン参加のメリットもたくさんありますので、どちらが良いとは一概に言うことはできないと思います。しかし、現地で発表することには、先に述べたように何者にも代え難い大きなメリットがありますので、研究を始めたばかりの若手の方には、可能であるならばオンラインではなく現地に出向くことを強く勧めたいと思います。


その他の演題やシンポジウム等に目を向けると、やはりAI (Artificial intelligence) に関する発表が多く存在して、重要なキーワードであると感じました。キヤノン社製のCTにおけるDeep learningを用いた設計された画像再構成技術AiCE (Advanced intelligent Clear-IQ Engine) もそうですし、画像の読影や撮影に関してもAIが身近なものになっていると実感しました。ある講演で演者の先生が述べていたように、今後はルーチン業務はAIに任せ、その分、患者接遇や若手技師の教育、新しい技術の評価といったAIでは行うことのできないことに時間を費やして、業務の効率化と診療の質の向上を進めていくことが大事なのではないかと感じました。


幸いにも、この記事を書いている2021年10月下旬には、新型コロナウィルス感染症の感染者数は大きく減少しており、コロナ禍の出口が少しずつ見えてきた雰囲気がします。実際に、会場にも参加者が以前よりも増えており、CTの演題の会場には多くの方が席を埋めるほどに集まっていました。このように、段々と学会や研究会も以前の形に戻りつつあります。しかし、我々はコロナ禍での学会活動において“オンラインの活用”という大きな武器を得ることができました。従って、今後は現地とオンラインのメリットを活かしつつ、新たな日常診療、研究活動、情報発信を行うことが求められるフェーズに入ったと実感します。


我々が携わっている首都圏キヤノンCTユーザー会も、2021年10月23日(土)にオンラインにて初めてセミナーを無事に開催することができました。詳細は、他の方の参加報告があると思いますが、今後もよりキヤノンCTユーザーのより良い“繋がり”をサポートできるようにしていきたいと思いますので、皆様の暖かいご支援をいただければと思います。


 


国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 放射線部

川内 覚

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