イベント参加報告
2021年学会・研究会・セミナー参加報告
日本CT技術学会第9回学術大会 参加報告
2021年10月2日に日本CT技術学会第9回学術大会が開催されました。本来であれば、2021年6月26日に仙台にて開催予定でしたがCOVID-19感染症の影響により延期となり、オンライン型での開催となりました。私も自宅からオンラインで拝聴させていただきましたので報告いたします。
日本CT技術学会第9回学術大会は、『格物究理 追根究底』がテーマとして掲げられました。意味を調べてみますと、『物事の本質を深く理解し、物事の本質を徹底的に究明すること』とあり、まさにCTに関する技術向上や機器開発を目的としている本学会に合ったテーマだと感じました。
シンポジウムでは『臨床で活躍する達人たちのルーティン』として、臨床に従事しながら研究活動を促進するためのヒントを得ることを目的に、シンポジストによるフリートーク形式で進められました。臨床に従事しながら研究に対してのモチベーションを維持するために、普段から心がけていることや考え方などを中心に、シンポジスト間で意見交換が行われました。シンポジストの方々が様々な考え方を持っていましたが、共通することは普段の疑問を解決していく結果、それが研究に結びつくように過ごしていることでした。臨床に従事していることの強みは、普段の検査から疑問が出てくることかと思います。普段の疑問の解決が結果的に研究発表に繋がれば素晴らしいと感じました。また、シンポジストの三重大学医学部附属病院の永澤直樹先生が働きながらの研究を部活に例えて話されていました。部活で練習して大会を目指すことと同じように、研究も実験をまとめて学会を目指すように考えていると仰っており、非常に共感できました。なかなか聞くことができない内容で、私も非常に刺激を受けたシンポジウムでした。
特別講演では東北大学病院放射線診断科の高瀬圭先生により『CT、MRIによる微細脈管構造描出と臨床応用』のご講演がありました。高瀬先生の3D画像処理に関する20年ほど前から現在に至るまでの診療放射線技師との取り組みについての内容でした。大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインの外科治療にアダムキュービッツ動脈の評価の記載がなかった頃、診療放射線技師と協力し4列CTにてアダムキュービッツ動脈の描出を試みたそうです。さらに、VRやCPR表示することで合併症の低減や手術時間の短縮ができたとのことです。その後、論文化することでガイドラインにも記載され、アダムキュービッツ動脈の評価が術式を決定する上で重要な術前情報として認識されました。現在では動静脈分離が困難である症例や、骨に近接する部分での連続性の描出が困難である場合に、Time resolved MRAにより動静脈分離や連続性を評価することも可能であり、症例によって使い分けているそうです。病気を診断、治療する医師が画像に求めるものに、撮影や画像を作成する技師がどう応えるかが非常に重要だと思いました。
一般演題ではDual Energy CTをはじめ、DRL、アーチファクト低減、造影技術や画質評価方法の提案など幅広い内容の報告がありました。金沢大学の安田圭佑先生より『Circular edge法とヨードワイヤを用いた方法によるtask-specificなCT画像の解像度測定』の報告がありました。逐次近似画像再構成法やDLRの解像特性は、対象物質の大きさ、コントラスト、ノイズレベルに依存して変化する非線形特性をもっています。そのため、臨床で対象とする部位の形状や想定する造影効果を模擬したファントムを使用するタスクベースな評価方法が行われています。現在、これらの非線形特性をもつ再構成方法の解像度評価はCircular edge法が用いられていますが、Circular edge法は30mm程度の大きさをもった円で測定を行うため、微小血管のような細い構造物に対応した結果を得ることが困難です。今回の報告では、微小血管を模擬した1mm径のヨードワイヤを作成し、従来用いられていたワイヤ法に類似した評価法(ヨードワイヤ法)により解像度を評価するものでした。非線形特性を示す逐次近似画像再構成法やDLRはCircular edge法を用いて評価を行うとFBP法よりも高い分解能を示していましたが、ヨードワイヤ法を用いるとFBP法よりも低い分解能を示していました。今回報告されたヨードワイヤ法は微小血管など細い構造物の解像度を評価する一つの手法となり得るものだと思いました。
また、神戸大学医学部附属病院の石川和希先生より『Deep Learning Reconstructionによる線量低減のための基礎的検討』の報告がありました。キヤノン社製CT装置の新しい画像再構成技術であるAdvanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)は、高い空間分解能とノイズ抑制効果が期待できるため、画質を維持した状態で線量低減が可能であると期待されています。今回の報告では、AiCE Body Sharpにおける線量低減時の画質をAIDR 3DやFIRST Bodyと比較するものでした。AiCE Body Sharpは高いノイズ抑制効果をもつため、AIDR 3DやFIRST Bodyと比べて線量低減が可能であり、ノイズテクスチャも保持することができていました。しかし、AiCE Body Sharpは線量変化による空間分解能の変化が大きいとのことでした。AiCE Body Sharpを用いる場合、過度な線量低減は画質の劣化を招く可能性があり、目的に合わせて考えていく必要があるのだと大変勉強になりました。
様々な学会、研究会がオンライン開催となり、通勤時間や自宅にいる時にゆっくりと拝聴できることは大変便利だと感じています。しかし、学会ならではの雰囲気や新しい出会いなど、現地参加でしか得られないものもあると実感しました。COVID-19感染症がこのまま収束に向かうことを願い、学会開催のかたちが現地開催とオンライン開催の良いところを併せもてば個人的に非常に嬉しいです。
公立大学法人 横浜市立大学附属市民総合医療センター 放射線部
長谷川 伸明