イベント参加報告

2022学会・研究会・セミナー参加報告

2022.02.25

日本放射線技術学会第68回関東支部研究発表大会参加報告

2021年11月27日(土),28日(日)に神奈川県横須賀市のメルキュールホテル横須賀で開催された日本放射線技術学会第68回関東支部研究発表大会に参加したので報告する.今大会は新型コロナウイルス感染症の影響により現地開催とWeb開催を併用したハイブリッド型での開催となったが,幸運にも感染状況が落ちついていた時期に現地で参加出来たので,現地で感じたことも含めて報告する.


今大会のテーマは,「Innovationを臨床現場へ ~放射線技術学の更なる深化~」である.Innovation(革新),すなわち新たな技術・知識を逸早く臨床に応用することが,診療放射線技師の役割であり,「患者さん」のために活用することをテーマとしていた.2日間の開催であったが大会プログラムは非常に充実しており,一般演題(142演題)に加え,特別講演,大会企画プログラム,研究会プログラム,フレッシャーズセミナー,ランチョンセミナーと盛りだくさんであった.当然ではあるが現地開催のためすべてのプログラムに参加することは出来ないので,CTに関連するセッションを中心に参加することとした.また,今大会は会場での参加者も多く,久しぶりに学会らしい雰囲気を感じることが出来ました.


関東支部研究班CTGUMのシンポジウムは「最新技術の導入と臨床応用」をテーマとして開催された.最新技術として「Dual Energy CT」,「Deep Learning (Imaging) Reconstruction」,「超高精細CT」がピックアップされ,4名のシンポジストから報告が行われた.各装置メーカーが発表する最新技術に関しては学会や講演会で報告が行われ,その有用性を聞くと「いつかは最新のCTを導入したい」と夢見る訳だが,臨床でどれだけ新技術が活用されているかはやはり導入した施設から聞いてみないと判らないことが多いものである.今回のシンポジウムはまさに臨床でどのように最新技術を役立てているかを取り上げたものであった.済生会川口総合病院の城處先生のDual Energy CTの講演では,Dual Energyを使用する検査が検討されており,主に血管描出を目的とした検査の造影剤量の減量,3D(VR)画像の血管描出能の向上,クモ膜下出血の3D-CTA検査等で造影不良の可能性がある検査でのCT値の担保,金属アーチファクトの低減を目的として使用されていた.Deep Learning (Imaging) Reconstruction (DLR,もしくはDLIR)については,信州大学医学部附属病院の窪田先生と足利赤十字病院の桐山先生からメーカーの異なる2種類の再構成方法について,画像計測の結果も踏まえて報告が行われた.窪田先生の講演では,解像特性およびノイズ特性が優れているDLIRを成人腹部のthin slice画像や,被ばく低減を目的とした小児腹部,冠動脈への適応について検討結果が示された,窪田先生の施設では,NPSの形状変化に注意をしながらDLIRの使用方法を検討されており,診断医とのディスカッションを行いながら診断能を最優先に最新技術の導入が進められていた.桐山先生の講演では,窪田先生と同様に解像特性およびノイズ特性が優れているDLRを,手術支援画像の末梢血管描出や骨3D画像の画質改善について検討結果が示された.桐山先生は通常線量においてDLRは解像特性の向上とノイズの低減が可能であることから末梢血管の描出能の向上を認め,骨の3D作成においてもBoneパラメータを使用することで画質改善が可能であることが示された.国立がん研究センター中央病院の宮前先生の超高精細CTの講演では,高精細モードであるSuper high resolution (SHR) mode,High resolution (HR) modeを適応する検査数がCT検査全体の約2.2%(1日5件くらい)であり,主に肝・胆・膵,頭頚部の初回検査及び術前検査が適応対象であることが報告された.また,焦点サイズの選択や再構成スライス厚,画像再構成マトリックスの決定など,運用上の取り決めが多くあることが示された.今回のシンポジウムを聞くまでは,最新技術が導入されると多くの検査で最新の技術が臨床使用されているのではないかと思っていたが,画質に関しては慎重な検討が行われ,臨床応用が進められていることが判り,非常に有意義であった.


一般演題では,聖マリアンナ医科大学病院からの発表で「肺動脈造影CTに対するプロトコルの検討」が非常に興味深かった.これまで報告されている通り,肺動脈造影検査において呼吸停止によるバルサルバ効果の影響で肺動脈のCT値が低下することが知られているが,この発表では呼吸停止後に3秒間の遅延時間を設定することで肺動脈のCT値が低下する症例が減少していた.また,左心房のCT値の低下を認めた症例もあったことから,適切な遅延時間を設定することで肺動脈のCT値の低下を予防できるという内容であった.


※ 息止め合図後の遅延時間の設定方法は,ユーザー会HPの「知っていると便利なワンポイントシリーズ」をご参照頂きたい(2022年2月公開予定).


特別講演Ⅲでは,元海上自衛隊横須賀地方総監(海将)の髙嶋博視先生の「指揮官(リーダー)の条件」を拝聴した.高嶋先生は2011年3月11日発生した東日本大震災発生時に海上自衛隊横須賀地方総監を務められていた方で,震災後の海上自衛隊の総指揮を執られた経験をご講演された.わが国で発生した未曾有の災害に直面した際の指揮官として覚悟や,福島第一原発に部下を送り出すときの心情などを含めリーダーのあるべき姿を聞くことが出来て非常に有意義であった.自身が高嶋先生の様な強いリーダーになれるとは思えないが,少しでも近づける努力を続けていきたいと思った.


参加報告としては,ここまでとなるが最後に個人的な感想を述べさせて頂きたい.今回の研究発表大会では初日の朝8時30分からフレッシャーズセミナーを担当させて頂いた.人前で講演するのは本当に久しぶりでしたが,とても話しやすく,目の前がPC画面ではなく,聴講者がいてくれることがとてもありがたかった.Webの良いところがたくさんあることも理解しているが,やはり参集型の良さも再確認出来た学会でした.

おまけに,軍港横須賀を散歩した際の写真をつけさせて頂きます. 軍港だけに普通に潜水艦がいて,びっくりでした.











千葉市立海浜病院 放射線科

高木 卓

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