イベント参加報告

2015学会・研究会・セミナー参加報告

2015.04.25

JRC2015 参加報告

2015年4月16日(木)から19日(日)までパシフィコ横浜にてJRC2015が開催されましたので、その参加報告をさせて頂きます。


今回の学会で、私が特に注目したのが、会期中に開かれた医療被ばく研究情報ネットワーク(Japan Network for Research and Information on Medical Exposure: J-RIME)の総会にて、本邦初の医療被ばくに対する診断参考レベル(diagnostic reference level: DRL)が案として発表されることでした。
簡単に、発表に至る背景を説明しますと、日本はCTをはじめとして人口あたりの画像診断機器の保有台数が世界の中でもトップクラスであり、いつでもどこでも高いレベルの画像診断を受けることができるというメリットがある反面、医療被ばく大国とも言われています。そのため、医療被ばくに対して行為の正当化と最適化が強く求められ、DRLと呼ばれる基準となる線量レベルを策定する必要が生じました。そして、医療被ばくに関連する諸団体が組織したJ-RIMEが中心となって日本独自のDRLを策定する運びとなり、その報告がJRC2015の会期中に開かれた総会にて行われました。

今回報告されたDRL案は、CTと一般撮影、マンモグラフィ、口内法一般撮影、IVR、核医学についてであり、CTに関しては、成人と小児について提案され、成人は日本医学放射線学会と日本診療放射線技師会が調査してまとめた結果を、小児は日本放射線技術学会の調査班と上述の日本診療放射線技師会がまとめた結果をもとに作成されました。DRLは、CTDIvolとDLPが指標とて採用され、詳細な数値は別表に示す通りとなります。各モダリティから提案されたDRL案は、今後各関連学会へ報告されて承認された後に、日本の正式なDRLとして採用される予定でありますので、今後の動向を注目する必要あると思います。

このようにJRC2015にてDRLが提案された意義は大きく、翌日の朝日新聞と読売新聞には、DRLに関連する記事が大きく報道され、社会的な関心の高さが伺えました。このような国内DRLの策定の動きを受けて、今後は各施設でも対策を進めていかなければならず、例えばエビデンスに基づいた線量評価行い、自施設での被ばく線量、線量指標を把握しておく必要があると思います。そのような医療被ばくに関するインパクトを与えたという意味でも、今回のJ-RIMEでのDRLの提案は、非常に大きな意味を持つものと考えます。

このような医療被ばくに関する新しい動きを受けて、JRC2015のプログラムでも、放射線防護、被ばく管理に関するシンポジウムや講演が例年以上に多く企画され、会場には多くの人が集まり、熱気に満ちていました。

そして、このような医療被ばくの線量管理を進めるには、検査毎の線量値や線量指標を集計して分析する必要があり、そのためのツールが現在多く開発されています。ITEM(国際医用画像総合展)においても、装置メーカーや研究組織により開発された線量解析ツールが数多く展示されていました。まさしく本学会のトピックスであり、興味深く実機に触れてきました。中でも放射線医学総合研究所が開発した、CT撮影の条件に応じて患者の被ばく線量を迅速に評価し臓器線量を提供するWEBシステムである“WAZA-ARI v2”(http://waza-ari.nirs.go.jp/waza_ari_v2_1)は、関連演題“CT撮影による被ばく線量評価WebシステムWAZA-ARI v2の開発とその利用”が日本医学物理学会学術大会において大会長賞を受賞し、改めて関心の高さを実感できました。そしてITEMの放射線医学総合研究所のブースでもこのWAZA-ARI v2のハンズオンを開催しており、実際に私もWAZA-ARI v2を体験してきました。WAZA-ARI v2では、v1と比べ線量評価を対象とする患者のモデルを痩せ形、肥満型や小児、幼児などを追加し、より正確な評価が可能となったとのことです。患者被ばく線量の線量評価を行うためには、専用のファントムや線量計が必要となりますが、これらを自施設で持ち合わせることは難しい場合が多く、測定には手間と時間も必要なことから、このようなシステムが普及することにより、将来的にはより多くの施設での線量評価が可能になると感じました。

このように本学会は、会期を通じて医療被ばく防護と線量管理について、新しい幕開けとなった機会であり、今後新たな研究も進んでいくと思われます。CTは、医療被ばくの中でも高いウェイトを占める検査であるため、より一層被ばく低減が求められます。そのためにも我々CTユーザも、医師やメーカーと協力して、より低侵襲に、より診断に有用な画像を提供できるよう、努力していく必要があると感じました。

国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 放射線部  川内 覚

ページトップへ