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2016学会・研究会・セミナー参加報告

2016.03.31

TOSHIBA FIRST Symposium 2016 参加報告

3月5日(土)に品川シーズンテラスカンファレンスで開催された「TOSHIBA FIRST Symposium 2016」に参加したので報告いたします。


東芝CTユーザーの皆様はご存知かと思いますが、今回のシンポジウムのテーマである「FIRST」はForward projected model-based Iterative Reconstruction SoluTionの略で、東芝が開発したCTにおける逐次近似再構成(Full IR)をさし、被ばく線量の大幅な低減と画質の改善が期待される技術である。

FIRSTの原理については、東芝メディカルシステムズホームページに以下の概念図が掲載されており、詳細はホームページを参照頂きたい。

http://www.toshiba-medical.co.jp/tmd/products/ct/aquilion_one_visionfirst/function.html#first

2015年4月にAquilion ONE ™/ ViSION FIRST Editionの販売が開始され、約1年が経過したタイミングでのシンポジウムなので、とても貴重な情報が得られるものと期待をして会場に向かった。会場は、JR品川駅から徒歩5分くらいの場所である。会場に入ると東芝の社員の方が大勢出迎えてくれた?いや、待機をされていてビックリ!!「やはり今回のシンポジウムは期待できるぞ!!」と期待がさらに高まりました。


ここからは、シンポジウムの内容を簡単にご紹介します(詳細は後日冊子にまとめて頂けることを願いたい。)。今回のシンポジウムは、東芝からのFIRSTの技術紹介に始まり、6人の演者の先生からFIRSTに関する講演が行われた。


産業医科大学の小川先生は、「FIRSTの物理評価」として被写体の形状も考慮するため市販の「円形」と「楕円形」のファントムを用いた画質評価について発表された。FIRSTは従来のFiltered Back Projection法(以下、FBP法)と比べノイズの低減が可能であり、被写体形状が円形の場合よりも楕円形の方がノイズの低減効果が高く、これはストリークアーチファクトの低減効果が高いことが一因として考えられるのではないかと報告された。また、解像度については、高コントラスト領域での解像度の向上だけでなく、アクリル(CT値差+70HU)や脂肪(CT値差マイナス)においても解像度が向上しているとお話しされました。また、講演の終わりに、「検討結果は、今回使用したファントムによる評価結果であり、ファントムの大きさや形状・対象とする物質が変わった場合、同様の結果が得られるとは言えず、非線形の画像処理であるFIRSTの物理評価は慎重に行う必要がある」とお話しされました。


東海大学八王子病院の遠藤先生は、「FIRSTのワークフロー」について臨床でのFIRSTの運用についてご紹介されました。FIRSTの有用性として、肺がんCT検診での大幅な線量低減に加え、骨関数特有のアンダーシュートがないこと、頚部血管や冠動脈の辺縁がよりシャープとなることなどをお話しされました。現状、臨床では再構成時間も考慮し、「肺HRCT(30枚程度)」、 「整形領域」、「内耳」、「冠動脈」、「頸部血管」や、被ばく線量の低減可能となる「小児」、「肺がんCT検診」、さらにストリークアーチファクトの軽減が可能となることから「上肢挙上困難症例」にFIRSTを利用しているとお話しされました。


佐世保市立総合病院の木戸先生は、「整形領域を中心としたFIRSTの初期経験」についてご紹介されました。骨皮質の骨折線はアンダーシュートが抑制されている為判別しにくい症例(骨折線が見えないわけではない)も経験するが、アンダーシュートの抑制は海綿骨内の骨折線を明瞭に描出可能であること、骨髄内の描出能を向上することから骨折に伴う骨髄内の出血を検出できる可能性のあることもお話しされました。また、整形領域ではないが、FBPでは描出出来ない拡張し希薄化した腸管壁が描出された画像も提示いただきFIRSTの描出能の高さを示されていました。

※腸管の画像は、私もびっくりでした。FBP法とは明らかに描出が異なる画像でした。


JCHO九州病院小児科の宗内先生は、「小児領域におけるFIRSTの臨床応用」について小児循環器領域を中心にご紹介されました。先天性心疾患を持つ患者は繰り返し放射線検査を行うため、被ばく線量の低減は重要であり、FIRSTを用いることで大幅な線量低減が実現出来ているとことをご紹介頂きました。また、心拍数の早い小児の冠動脈の描出能について、同一のデータを使用してFBP法とFIRSTを比較した画像の提示があり、FBPでは描出されていなかった右冠動脈がFIRSTでは明瞭に描出されていたことは非常に興味深いものであった。


熊本大学大学院の宇都宮先生は、「循環器領域におけるFIRSTの臨床応用」について冠動脈のプラーク評価を中心にお話しされました。冠動脈のプラーク評価においては血管のCT値の上昇に伴いプラークのCT値が上昇してしまことが問題となるが、血管ファントムを用いた検討においてFIRSTでは血管とプラークの境界がシャープとなり、CT値の精度が向上するとご紹介頂きました。また、ステントにおいても、分解能の向上によるステントのプロファイルの精度向上、これに伴うステント内のCT値の精度向上していることご紹介頂きました。更にFIRSTを用いることで心筋の遅延造影を、低管電圧(80kV)で、尚且つ低線量で撮影できる可能性についてもお話しされました。


広島大学大学院の粟井先生からは、「全身領域におけるFIRSTの臨床応用」について新しいFIRST Ver.2の内容も含めてご紹介いただきました。Ver.2では新たに頭部画像用のパラメータが追加され、低コントラスト検出能の大幅な改善により、スライス厚1㎜の画像を用いた急性期脳梗塞の診断の可能性ついてご紹介頂きました。提示された画像は1㎜スライス厚とは思えないほどノイズの少ない画像であり、頭部画像に対しても最適化を行ったFIRST Ver.2は超低コントラスト検出能の向上にかなり期待できる技術であると実感できた。


FIRSTに関しては、再構成時間が長い*こともあり臨床での利用が多くないのではないかと思っていたが、今回のシンポジウムに参加をして十分臨床に利用出来る技術であること、臨床で積極的に利用すべき技術であることを確認することが出来た。


個人的な意見として、最新技術によるまったく新しいCTの画像を多く見ることが出来たことは有意義であったし、ワクワクでした。今後もFIRSTだけでなく最新の技術や臨床応用法などを紹介するシンポジウムを定期的に開催して頂けることを願いたい。


* FBPと比べれば長く時間が掛かるという意味




世話人 千葉県 T

追伸


参加報告なのでもう少し短くまとめるべきと思いましたが、今回の「TOSHIBA FIRST Symposium 2016」の演者の先生方の講演内容がどれも興味深く、文章が長くなてしまったことをお詫びします。

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